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絶やさず、繋いで、継いでいく。【3部】~未来編~

インタビュー

2021/09/09

上野焼(あがのやき)と庚申窯(こうしんがま)の歴史を聞くと、細くも強く紡がれた物語があった。
いずれ庚申窯三代目となるであろう裕太氏だが、彼はいかにして作陶家の道に進むことを決めたのだろうか。
「最初は継ぐ気はなかったですね。大学に入って就職を考えた時に家に戻ればいいなって思った感じです。」
どうやら、意外にも最初から店を継ごうとは考えていなかったらしい。陶芸に興味がないわけでもなく、美術芸術に関心がなかったわけでもないが、陶芸を生業としようとまでは思わなかったのだろう。
大学まで進みいざ就職をするとなると、父や祖父の仕事をする背中が脳裏に浮かんできて、家業を継ぐことを意識しだしたようだ。
やはり、子は親の背中に惹かれるのだろう。
(庚申窯の作業場)

いざ、家業を継ぐとなるといろいろな困難が待ち受けている。技術を習得するだけでも数年〜数十年はかかる陶芸の世界。そこから自分の思い描いた通りの作品を作るまでには試行錯誤の繰り返しが続く。
自身が納得し歩みを止めない限りは、際限なく高みを目指せるのが陶芸の世界なのだと言える。裕太氏も、庚申窯の発展にかなり意欲的だ。
裕太氏の父で二代目窯主の享一氏は、
「やっぱり今までのやり方だけじゃ上手くはいかないです。若い世代に入ってもらって新しいことにも挑戦せんとね。」
とおっしゃっていた。しきたりや伝統を重んじるだけでなく、発展への未来をきちんと意識している。
(作成途中の作品)

庚申窯は後継者がいるが、上野焼全体ではどんな状態なのだろうか。
「上野焼の窯元はほぼ全てが家族経営です。家業を子に受け継がせるところもあれば、自分の代で畳むところもあります。後継者がいるところは少ないですね。」
伝統工芸の世界は年々、霞がかってきているようだ。工芸士の高齢化や技術の進歩など要因はさまざまだ。売上の低下も要因の一つと言える。
窯元はどことなく閉鎖的に感じることがある。伝統ある技術を教え伝えていくには、なによりも信頼関係が大事なのだろう。その点でいくと、やはり家族が1番なのかもしれない。
順調に商売ができていた頃は子に継がせることもあっただろうが、焼き物最盛期と比べると難しくなってきている。
その状態で無理をしてまで子に継がせようとはならないのかもしれない。だが、彼らは決して諦めているわけではない。門を叩く者がいれば応えてくれるはずだ。
生半可な気持ちでは難しいだろうが、熱意を伝え、信頼を得ることができれば可能性はゼロではない。

上手く弟子入りすることができれば、さまざまな恩恵を得られるはずだ。まずなによりも、受け継がれてきた伝統技術を余すことなく吸収することができる上に仕事場を借りることができ窯や道具が使える。一から自分で揃えるとなると懐も豊かにしておかなければ辛いだろう。窯は小さいもので数十万、上を見れば数百万するものもあるらしい。
窯だけでなく、ろくろなどの道具や色を付けるための釉薬を揃えるのも大変だが、窯元に弟子入りすることができればそこも恩恵をうけられるだろう。
(庚申窯の焼き窯)

自分一人でやるとなると難しいが、国の施策や行政の取り組みを頼る手もある。例えば地域おこし協力隊として町の振興に携わりながら修行をしたり、移住支援を活用したり。
伝統工芸の継承は全国的な課題でもあるが、上手く繋がりを持てれば現実的(金銭的な)な問題もクリアできるかもしれない。
工芸士の世界は、入り口こそ狭いが門をくぐってしまえば様々な可能性が広がっている。

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