【正社員求人】暮らしに根づく技術を、次の世代へ。伝統的工法を継承する大工見習い・職人募集 株式会社住幸房

福岡県福津市。福間海岸近くに拠点を置く「住幸房」は、日本に古くから伝わる建築技術を生かした家づくりを行う工務店です。
事務所のドアを開けると、ふわっと木の香りに包まれます。
「木の香りがしますか?ずっといるから、もう鼻が慣れちゃって」。
そう話すのは、代表の池尾拓さん。
住幸房では、新築住宅の設計・施工をはじめ、古民家再生や増改築、補修まで幅広く手がけています。
現代の木造住宅の多くが、構造体となる柱や梁は大規模工場で機械加工され、木材同士を金物で固定する工法で建てられています。
一方、伝統的工法では、大工自身が墨付け・刻みを行い、木と木を組み合わせる「木組み」によって建物の骨格をつくります。木の性質を見極めながら柱や梁(はり)を加工し、自然由来の素材の力を生かす。そこには、大工自身の経験と技術が欠かせません。

池尾さんは、20代で住幸房を設立しました。そのきっかけは、思いがけない出来事でした。
二人の大工、仕事を失う
「僕はもともと独立志向はありましたけど、計画的に独立したわけじゃないんですよ」。
ともに住幸房を立ち上げたのは、同い年の滝口亮太さんです。二人は学生時代、設計事務所でのアルバイトを通じて知り合いました。
「ある時、卒業したらどうすると?みたいな話になって。僕は大工育成塾に行って大工になるっていうのを滝口に言ったら、『面白そうやね。じゃあ、俺もこれに行く』って、一緒に大工育成塾に入ったんですよ」。

大学卒業後は、別々の工務店で大工として働き始めました。働く場所は違っても、塾を通じて交流は続き、「いつか一緒に仕事ができたら」と話していた二人。
その転機は、リーマンショックでした。不況の波が押し寄せた2010年。池尾さんは会社から「しばらく仕事がないから休んでおいて」と告げられます。
大工の世界では、一人の職人として日当で働く常用大工が多く、仕事がなければ収入もなくなってしまいます。
「僕が勤めていた会社は、ほとんどの職人さんがしばらく仕事がない状態になったと思います。そのタイミングで、じゃあ自分でやろうって」。
池尾さんの頭に浮かんだのは、滝口さんでした。
「自分でやるしかないなって思って電話したら、彼も前の日に会社をクビになってたんですよ」。
職を失った二人は、それを機に独立。しかし、資金も準備もない状態からのスタートでした。
「とにかく二人でできそうな仕事をやって、自転車操業でどうにか食いつなぎながら、今にたどり着いた感じです」。
当時、二人の大工歴は6年目。一通りの大工仕事はできましたが、いざ自分たちで工務店を始めると、知らないことが次々と出てきました。
「工務店をやるのと、大工仕事ができるのは全く別なんですよ」。
家づくりには、屋根や電気などさまざまな工事の知識、設計や現場管理も必要です。分からないことがあれば、その道の職人に聞く。そうして、体当たりで工務店としての経験を重ねていきました。
「28歳くらいなんで、お客さんに『本当に大丈夫なの?』みたいに思われると仕事が取れないから、虚勢を張ってたと思います。でも、若いからこそ、長い間メンテナンスできますって、売りにしたりしていました」。
ときには、経験のない仕事でも「できます」と言い切り、あとから必死に方法を探ることも。若さゆえの勢いも味方につけながら、目の前の仕事に食らいついてきました。しかし、そこに至るまでの修業時代にも、何度も壁にぶつかってきたと池尾さんは振り返ります。
仲間がいたから、進み続けられた
「弟子1〜2年目ぐらいの頃、自分の技術が伸びないっていうのが一番苦しかったですね」。
池尾さんの親方は、一から丁寧に教えるタイプではありませんでした。同じ作業を一緒にするのは最初の一回だけで、あとはそのやり方を見て覚えるしかなかったそうです。

「できるようになってきたなって実感できたのは、3年ぐらい経ってからだったんですよね。そこからは面白くなるんですけど、そこまでは僕にとっては苦しみでしかなくて」。
それでも踏ん張れたのは、いつか独立したいという思いと、塾で出会った同期の存在でした。
現在の「大工志塾」へとつながる大工育成塾は、働きながら伝統的な大工技術を学ぶ研修制度です。日々の現場仕事に加え、木材に加工する位置や形を書き込む「墨付け」や、それをもとに木材を加工する「手刻み」などの技術を基礎から学びます。
一般的な大工の修業では、身近にいるのは親方や兄弟子が中心で、横のつながりがあまりないそうです。しかし、大工育成塾では、同じ時期に大工の道へ進んだ仲間たちと、定期的に顔を合わせることができました。
「みんな同じことで悩んでるし、ある人は自分がやってない仕事を任せてもらってたりして、『うわぁ、これは負けられん』みたいな。愚痴も言い合えるし、お互いに刺激があるっていうのはありがたかったなと思います」。
そのつながりがあったからこそ、池尾さんは軸をぶらさずに歩んでこられたと振り返ります。
そして大工育成塾を卒業して数年経った頃、「講師をやってみないか」と声をかけられたのだそう。
「大工育成塾って、育成のために国からお金が出てるんですよね。ある意味、国に育ててもらったので、僕は恩を返さないといけないと思って」。
その想いから講師を引き受け、現在まで、若い大工を育てる活動に携わり続けています。
「教えられる人が教えていかないと。一回途切れたら、もう後ろにつながっていかないから」。
弟子を一人前に育てるには、時間もお金も、教える側の労力も必要です。さらに、大工の数は1980年の約94万人から、2020年には約30万人にまで減少しています。それぞれの工務店や職人だけに技術継承を委ねるのではなく、「意識して育てる仕組みをつくっていかなければならない」と池尾さんは考えています。

住幸房でも、若手大工の育成に「大工志塾」を活用しています。かつて池尾さんから学んだ塾生が、今では講師として次の世代を教えることも。教わった人が、いつか教える人になる。大工の技術はこうして人から人へと手渡されていきます。
そして、住幸房が未来へ残したいものは、技術だけではありません。
みんなが幸せになる家づくり
「うちの会社は住幸房(すまいこうぼう)っていうんですけど、みんなが幸せになるっていうのは重要ですね」。
池尾さんが言う「みんな」とは、家を建てるお客さんだけではなく、自分たちや家族、ともに家をつくる業者さん、そして地域も含まれています。
「『地域が幸せじゃない状態』ってどういうことかって言うと、そこに建物が建ったから環境が悪くなったとか、景観が悪くなったとか。僕はそういうのは嫌なので、『地域が幸せ』という状態を目指したいです。あとは地球環境的なところも気にかけていたいですね」。

住幸房では、木・土・石・紙といった自然素材を使い、できるだけ環境に負荷を与えない家づくりを心がけています。
「うちは外壁を塗装しないことが結構あるんです。塗料は何かしら水に溶けて、どこかに流れてしまうと思うんで、あんまりしたくないんですよ。使う時も、なるべく自然系の塗料にしてます」。
「土の中にコンクリート製の杭を打つとか、どでかいコンクリートの塊を埋めることも、あんまり環境的には良い影響を与えてないんですよね。
あとは、家を建てると土の中の水とか空気の循環も変わるので、できるだけそういう影響を小さくしたいです」。
もちろん依頼主の希望を優先するので、必ずしも環境に最大限配慮できるというわけではありません。それでも、可能な範囲で自然に寄り添う方法を選ぶ。それが、住幸房が大切にしている姿勢です。
また、長く手入れをしながら住み続けられることも、住幸房が自然素材を選ぶ理由の一つです。昔から使われてきたものだからこそ、将来も材料を調達し、職人の技術で補修することができます。

「僕らが使っている素材自体は、なくなることはないので。社会がどういう状況になっても、メンテナンスはできると思います」。
いつか解体される日のことも考え、「子孫にゴミの問題を押し付けたくない」という思いも、役目を終えたあとに自然へ還る素材を使う理由です。
「近江商人の“三方よし”じゃないけど、そんな感じで、誰も不幸せにしない。仕事をする上では大切にしていますね」。
家づくりの指揮者になる
「工務店って、オーケストラの指揮者なんですよ」。
池尾さんは、工務店の役割をそう表現します。
一軒の家ができるまでには、大工だけでなく、左官、瓦、電気、畳など、多くの職人が関わります。
「オーケストラって、それぞれの楽器のスペシャリストがいるじゃないですか。指揮者は全部の楽器を演奏できるわけじゃないけど、どういう音楽にしたいかを考えて、それぞれに指示を出す。それと一緒です」。
お客さんの希望を聞き取り、それを実現するために、どの職人に何をお願いし、まとめていくのか。なかでも大工は、家づくりの現場に最初から最後まで関わる存在です。住幸房では、大工自身が現場監督も担い、ほかの職人たちの仕事をつなぎながら現場全体を動かすこともあります。

「自分たちが山で木を切って、製材して、家を完成させて引き渡すところまで、実際にやってる現場もあります」。
山の木から一軒の家ができるまで、家づくりの一連の工程に関われるのも大工仕事の魅力です。その仕事の先には、大きな喜びもあります。
「一番嬉しいのは、お客さんからダイレクトに『あなたに頼んでよかった、ありがとう』って言われることですね」。
そして、家が完成した後も、メンテナンスを通して付き合いは続きます。
「家のお医者さんみたいな感じで、『ちょっとおかしいところがあるんですけど、見てもらえませんか』っていうのにずっと対応していく。長い付き合いになって、信頼して任せてもらえるっていうのは、嬉しいことですね」。
これも大工という仕事ならではの魅力です。
暮らしに必要だから、残っていく
お客さんから信頼して任せてもらえること。それは同時に、責任を背負うことでもあります。
池尾さんが、従業員や大工志塾の塾生にも伝え続けている言葉は、「妥協するな」。

「趣味でつくってるわけじゃないので、自分が『これだったら人に渡せる』というものをちゃんとつくろうねって。誰かがこれに満足して、お金を払ってくれる。技術は自己満足じゃないんですよ」。
池尾さんにとって、伝統的工法は、あくまで「人の暮らしのためにあるもの」です。技術を身につける人を育てるだけでは、継承は成り立ちません。その技術でつくられた家を「欲しい」と思う人がいて初めて、大工の仕事として続いていきます。
「建築の技術って暮らしに密着していて、実用の技術として必要だから残ってきたんですよね。これを僕は、そのままつなぎたいだけなんです。『文化として大事だから保存しましょう』だけじゃ、残っていかないと思うんですよね」。
暮らしの循環を、次の世代へ
そんな池尾さんの目は、家づくりの外にも向いています。
「会社の部活で米作りしてるんです。強制部活(笑)」。
「社会がどんな状況になっても、自分たちは生きていけるようにって。家のメンテナンスと似たような感覚かもしれないですね」。

かつて職人には、仕事をしながら田畑を耕す「半農」の人も多かったそうです。住幸房でも、将来的には農業を事業の一つにしたいと考えています。
「最終的には農業も事業化したいんですよ。『半農してます』って言えるぐらいにはなりたいですね」。
さらにその先には、林業も視野に入れています。木を育て、建物をつくり、食べ物を生み出す。池尾さんが思い描いているのは、そんな一つひとつの営みが、無理なくつながっていく暮らしです。
「僕がやってるのは、暮らしの中の循環の一個だと思ってるんですよね。特別目立つことをしたいわけじゃなくて、気づいたらそこにあって、うまいこと循環に乗ってる。それぐらいがいいんです」。
家づくりについても同じです。
「『どうだ、これすごいだろ』みたいな建物というよりは、『なんかいいね、馴染んでるね』ぐらいを目指したいです」。
技術を見せつけるためではなく、誰かの暮らしを支えるためにつくる。そんな住幸房の大工仕事に興味を持つ人に、池尾さんはこう呼びかけます。
「自分に向いてるかどうかなんて、やってみなきゃ分かんないから。とりあえず経験してみてほしいですね」。
住幸房では、実際の現場に入り、仕事を体験する機会も設けています。泊まれる場所も用意しており、過去には海外からのインターンを受け入れたこともあります。
まずは、実際にやってみること。その先で大切になるのが、自ら技術を身につけようとする姿勢です。同じ作業を次に経験できるのが、数年後ということもあります。だからこそ、一つひとつの機会を自分のものにしていくことが大切です。
「言われたことをやるんじゃなくて、『これを作れるようになりたい』って思ってるかどうかだと思います」。
一通りの仕事ができるようになるまで、10年ほどかかることもあるそうです。それでも、少しずつできることが増えていく過程を楽しみながら、地道に技術を積み重ねていける人。そんな人とともに、住幸房はこれからも、暮らしに必要とされる大工の仕事を次の世代へつないでいきます。
【 株式会社住幸房 】
HP:https://sumai-koubou.com/
Instagram:https://www.instagram.com/sumaikoubou_takuikeo/
紡ぎての添え書き(編集後記)
「そろそろマイホームを建てたい」。
そう思ったとき、伝統的工法で建てる家を選択肢のひとつに入れられる人は、どれだけいるのでしょうか。
私自身、今回の取材をするまで、昔ながらの技術を受け継ぎながら、今の暮らしに合う家を建てている大工さんたちがいることをほとんど知りませんでした。
どれだけ優れた技術も、知らなければ選ぶことはできません。
そして、選ぶ人がいなくなれば、その技術を受け継ぐ人もいなくなってしまいます。
受け継ぐ人がいて、知る人がいて、選ぶ人がいる。
そうやって少しずつ、技術は次の世代へつながっていくのだと思います。
「大工仕事は気になるけど、自分に向いているかな」。
「経験がないけど大丈夫かな」。
そう思うのは、きっと自然なことです。だからこそ、まずは実際に木に触れて、現場に立ってみる。やってみて、「面白い」と思えたらその先を考えてみませんか。
もし少しでも大工という仕事に心が動いたなら、まずは池尾さんに話を聞いてみてください。
募集要項
| 会社名 | 株式会社 住幸房(すまいこうぼう) |
| 募集職種 | 大工見習い・大工職人 |
|---|---|
| 業務内容 | 墨付け・刻み・現場作業全般、材料運搬・製材など大工作業に付属する作業 ※大工仕事未経験の方も歓迎 |
| 雇用形態 | 正社員 |
| 勤務地 | 福岡県福津市花見が浜1-4-18 主に本社所在地の福津市及び作業場所在地の宗像市を中心とする福岡県内(建築地が主に福岡県内ということです) ※まれに福岡県外の出張もあります。 |
| 就業時間 | 8:00~18:00(固定残業時間含む)(うち休憩時間2時間) 定休日:日曜・祝日 その他の休み:年末年始7日間、お盆5日間、会社指定日(年6~10日程度) |
| 給与 | 弊社規定の賃金表による(経験・資格などで判断します)。 年1回の昇給、技能給・資格給あり。 基本給に固定残業代32時間分を上乗せした金額が所定賃金となります。 賞与は会社の業績によって支給する場合があります。 初任給の参考額:未経験者は229,201円(税引き前)(固定残業代含む)※経験者の技術・能力はしっかり評価します。 |
| 保険 | 社会保険加入(建設国保、厚生年金、雇用保険)、退職金制度あり(勤続年数による規定あり) |
| 試用期間 | 経験者: 1~3ヶ月、未経験者:6ヶ月(試用期間中の給与は面談の上) |
| その他 | ●必要な資格:自動車普通免許MT ●優遇する資格:建築大工技能士(1級、2級)、施工管理技士(1級、2級)、自動車中型免許、その他建設系資格 ◆学生の在学期間中のインターンシップ受け入れ可能 |
この「求人」の募集者

株式会社住幸房
福岡県福津市。福間海岸近くに拠点を置く、日本に古くから伝わる建築技術を生かした家づくりを行う工務店。
新築住宅の設計・施工をはじめ、古民家再生や増改築、補修まで幅広く手がける。


