数十年後のために今、山へ還す Replace To Nature

1坪の廃材無人販売店『ReToNa』
「ここはもともとゴミ捨て場なんですよ。始めるにはちょうどいいなと思って。」
そう笑顔で話してくれたのは、この場所で1坪の廃材無人販売店を営むReToNa(リトナ)の池田尊信さんだ。店内に並ぶ古材・古道具の多くは、池田さん自身が現場に行って頂いてきたものばかりだそう。
1坪、無人、廃材、という珍しい要素が詰まったReToNa。
今回は池田さんにReToNaを始めようと思ったきっかけや、活動していく中で大事にしている考え方について伺った。
巡り巡ってくるしくみの中で何をするか

現在、廃材の販売を店舗とネットの両方でおこなっている池田さんだが、販売業に興味があって始めたわけではない。本業であるハウスメーカーの仕事を通して、日本の林業の現状を知ったことがきっかけになったそうだ。
日本の木材自給率はここ数年で上がってはいるものの、世界で2番目の森林保有国としてはまだ高いとは言えない。この木材自給率の低さは、戦時中の燃料確保のために森林伐採を続けた日本が、戦後の復興に必要な木材を海外の輸入に頼ったことが始まりだと言われている。
そして日本の住宅建築業界では、現場にもっとも近いハウスメーカーが利益を大きく得ようとすると、山から木を切る、加工する人たちの利益が非常に少なくなってしまう仕組みがある。
このように国内の木材が売れず、林業で利益が得にくい状況が約50年続いた今。林業を生業とする人はどんどん減少し、伸びた木が適切に伐採されずに山が荒れ、土砂災害が増えるという悪循環が起こっている。
「50年かけて林業がここまで衰退して、災害やら色々な形で回ってきているので、今どう動くかで子供たちの世代にまた回ってくる。だからこの廃材販売の方法が正しいかは分からないけど、利益をちゃんと山に還すために動いています」
森を育てる、山へ還す、その想いでこの廃材無人販売店を始めた彼は、売上の一部を山間部の災害が起こった地域等に寄付している。
きちんと山に還すために、大切にしていること

「この活動自体、ビジネスのためにやってるわけではなく、還元のためにやってることなので」
森や山を育てるために“還元させること”を目的として活動する池田さん。廃材の仕入れ先、販売価格、売上の寄付先にも誠実に向き合っている。
「廃材を頂く相手方の、産業廃棄物の処理を助ける形になってしまったり、寄付した売上が相手方の利益の一部になってしまったり、そういう風になるのは違うなと思っているので、どこから引き受けてどこに還すかは、とても吟味しています」
また、店内に並ぶグラスや湯呑、レトロな扇風機に掃除機。これらの古道具の販売価格を決めるときも、長く大切に使ってもらいたいという想いが込められている。
「大正や昭和時代の製品もありますけど、これが次の世代に渡ったときには、作れる人も価値がわかる人もいないかもしれない。だから大事に使ってくれる人に買ってほしい。価格は興味のない人にとっては高い、けど本当に好きな人、欲しい人にとっては手が出せる金額に設定しているんです」
活動のひとつひとつが“還元させる”という理念に添えているのか、とことん考え抜く池田さん。
「僕の頭の中は面倒くさいですよ」と笑いながら話してくれた。
誠実に変化していく Replace To Nature

“山に還元する”という想いに添って、廃材無人販売店ReToNaを営む池田さん。本業もあり、ご家族もいる現在の生活のなかで動き始めるには、この1坪という大きさがちょうど良かったという。
「無人販売ということもあって、最初は不安もあったし心配もされました。でも始めてみると、わざわざ電話で金額のことを訪ねてくれたり、『持っていくときに少し散らかしてしまった、すみません』と伝えてくれたり。たまに心無いことを言われることもありますが、やっぱり良い人が多いなと思いました」
日本の森林という大きな課題に対して自分の活動が正しいのか、この形が合っているのか分からない、時代や生活の変化に伴って、この場所も変化していくのかもしれないと話す彼。
今後も“山に還元する”という根柢の想いは変わらないまま、誠実に試行錯誤を繰り返しながら、古くなった道具と新しい使い手が出会う場所を作っていくのではないだろうか。
Replace To Nature (ReToNa)
リトナさんの現在のご活動についてはInstagramからご確認ください。
Instagram:https://www.instagram.com/replace.to.nature/
古材・古道具のオンラインショップ:https://retona.base.shop/





