やさしさを焼いて、誰かの一歩を支える。「米粉マフィンmou」と、福岡で広がる“挑戦のかたち”

あなたが、つい手に取りたくなるお菓子って、どんなものだろう。
見た目がかわいいもの。
食べると、少しほっとするもの。
身体のことを気にしている日でも、なんとなく安心できるもの。

警固のマルシェの一角に並んでいた「米粉マフィンmou(ムゥ)」のマフィンには、そんなやさしさがあった。
表面にのぞくフルーツの断面。ふっくらと丸みのある形。

いちご、オレンジ、きなこ、プレーン、バナナ、チョコレート――種類も豊富で、思わず「どれにしよう」と迷ってしまう。

その一つひとつを焼いている持留さんは、“かっこいい”という言葉がよく似合う人だった。けれど話しているうちに、その印象は少しずつやわらいでいく。
よく笑い、飾らずに話す。その自然さの奥に、静かな芯の強さがある。

「自分が作ったもので誰かが笑顔になるのが嬉しい」。

そのシンプルな気持ちが、今も変わらず、マフィンの中にある。

「食べるもの」が変わると、身体も変わる

持留さんは、パーソナルトレーナーとして身体づくりに向き合いながら、日々を過ごしている。

「もともと、身体を動かすのが好きで」。

さらりとした一言の裏には、食事や生活習慣、コンディションといった日々の積み重ねが、きっとあるのだろう。

「食べるものって、本当に大事だなって思います」。

その言葉は、知識ではなく実感だった。
転機は、肌トラブルだったという。

「ちょっと荒れた時期があって。原因を探していく中で、小麦を控えるようになったんです」。

劇的な変化ではない。けれど、

「なんとなく調子がいいなっていうのが続いて」。

その“なんとなく”を、見過ごさなかった。
小さな違和感、小さな変化。

それを丁寧に拾っていくうちに、「食べるもの」への意識が少しずつ変わっていったという。

「せっかくなら、美味しくて、身体にもいいものがいいなって」。

ごく自然な感覚が、米粉マフィンづくりの入り口になった。

「誰かのために作る」気持ちは、ずっと変わらない

お菓子づくりは、小学生の頃から好きだったという。

「レシピ本を買ってタルトを作ったり、友人の誕生日に手作りのお菓子をプレゼントしたりしていましたね」。

誰かに渡すために作る時間。
その時間ごと、きっと好きだったのだろう。
そうして出来上がったものを手渡す瞬間。

「自分が作ったもので、誰かが笑顔になることが嬉しい」。

その感覚は、今も変わらない。
シンプルだけれど、揺らがない原点。
今のマフィンも、その延長線上にある。

うまくいかない時間も、特別なことではなかった

米粉でのマフィンづくりは、最初から順調だったわけではない。

「最初はやっぱり、うまくいかなかったです」。

彼女はそう言って笑う。

米粉は、小麦粉のように上手くはまとまらない。
崩れたり、紙にくっついたり。

「全部くっついて取れなかったりして(笑)」。

さらに卵も使わない。
置き換えるだけでは、うまくいかない。

「味は美味しいけど、これじゃ出せないなっていうのが続いて」。

それでも、
「どうしたらいいんだろうって考えながら、ずっと作ってましたね」。

特別に語られるような“挫折”ではない。
ただ、続いていた時間。その繰り返しの中で、少しずつ形になっていった。

“身体にいい”だけで終わらせないために

持留さんのマフィンには、小麦粉も卵も使われていない。

けれど、食べたときに感じるのは、制限ではなく、「ちゃんと美味しい」ということ。

「体にいいものって、美味しくないイメージがあるじゃないですか。それが嫌で」。

その一言に、彼女の妥協しない軸がある。

「だから、小麦粉や卵を使わなくても美味しいものを作りたかったんです」。

身体のためだけでもなく、味だけでもない。

両方をあきらめない。

そのバランスが、マフィンの軽やかさにつながっている。

「このマフィンなら食べられる」という声

活動を続ける中で、印象に残っている出来事がある。

アレルギーを持つ子どもに、「このマフィンなら食べられる」と喜んでもらえたこと。

「すごく感謝されて、それがとても嬉しかったんです」。

多くは語らない。
けれど、その一言にすべてが含まれているように感じた。

選べるものが限られている人にとって、“食べられるお菓子”があるということ。

それはきっと、小さなことではない。

「やっててよかったなって思いますね」。

何かに熱中し、がんばる理由。 

それは、きっとシンプルだ。

「やってみよう」から広がった場所

販売を始めたきっかけは、三年前のマルシェ出店。

「やったことなかったです。でも、やってみようかなって」。

特別な準備が整っていたわけではない。
それでも一歩踏み出せたのは、人とのつながりがあったからだという。

場所を貸してくれた人。
次の機会をつないでくれた人。

そうした支えの中で、少しずつ活動の場は広がっていった。

「なんとかなるかなって思いながら(笑)」。

彼女は現在も拠点を移しながら、マフィンを焼き続けている。

「ただただ無心で作っています」。

だけど、その時間は、彼女自身を整える大切な時間でもあるのだそう。

「次は自分が」――生まれた新しい思い

活動を続ける中で、変わってきたことがあるという。

「今は、自分だけじゃなくて、誰かのことも応援したいなって思ってます」。

最初は何も分からなかった。

「春日で場所を貸してくれた方には本当に助けてもらったんですよね」。

「だから、私が助けてもらったように、今度は自分が誰かの後押しをしたいなって思ってます」。

福岡で、“やってみたい”が形になる場所を

今、持留さんは、“自分のため”ではなく、“誰かが踏み出す一歩のため”の新たな取り組みも進めている。

それが、「ルミニーマルシェ」の運営。

店を持っていない人や、これから何かを始めたい人が集まる場所だ。

「最初の一歩って、なかなか踏み出せないじゃないですか」

だからこそ、

「そのきっかけになる場所を作れたらいいなって」。

そして今、クラウドファンディングにも挑戦している。

この場所を続けるために。

もっと広げていくために。 

そこにあるのは、はっきりとした思いだ。

「福岡でも挑戦できる環境をつくりたい」。

「生まれ育った福岡を、もっと盛り上げていきたい」。

まだ知られていないお店や人。
挑戦したいと思っている誰か。

その存在が埋もれてしまわないように。

「福岡って、つながりが多いなって思うんです。だからこそ、小さな取り組みが広がる可能性もあるはずなんですよね」。

その思いは、マルシェの運営にも、クラウドファンディングへの挑戦にもつながっている。

持留さんの踏む出す一歩は、街のための一歩でもある。

未完成でもいい。動きながら形にする

持留さんの言葉で、何度も印象に残るものがある。

「とりあえずやってみよう」。

完璧に準備してから始めるのではなく、
動きながら形にしていく。

「未完成でも、やってみたほうが形になるし」。

そしてもうひとつ。

「誰かにこういうことがしたいって話しておくと、いつか誰かが、そのきっかけをくれることもあるから」。

一人で抱え込まないこと。
人とつながること。

その積み重ねの中で、彼女の今がある。

やさしさは、ひとつずつ手渡されていく

持留さんは、これから、ワークショップもやってみたいという。

「一緒に作る時間もあったら楽しいなって」。

誰かが笑顔になること。

誰かが一歩を踏み出すこと。

そのどちらも、特別なものではないのかもしれない。

ただ、「やってみよう」と思ったことを続けてきただけ。

会場に並ぶマフィンのひとつひとつに、その積み重ねが表れているようにも感じる。

「もっと、みんなが笑顔になれる場所を作りたいです」。

そのやさしさは、次の誰かの一歩へと、静かにつながっていく。




米粉マフィン mou(ムゥ)

Instagram:kome___mou

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米粉マフィンmou(ムゥ)

身体に優しい米粉マフィンの製作・販売している。

マルシェイベントの主催もしており、店舗を持っていない人や、これから何かを始めたい人たちのための活動にも力を入れる。

イベント一覧
MONTE PICNIC 17 feat.KANZA CERAMICA『ドローイングワークショップ』

福岡市東区箱崎にあるお店《MONTE(モンテ)》さんと、陶芸で造形作品を作っている《カンザセラミカ》さんが、コラボレーションのワークショップされます!

日時|2026年4月4日(土)
時間|①13:00~(満席)  ②16:00~
場所|元下宿(福岡市東区箱崎2-14-32 2F)

森のこみち こもれびvol.2

さまざまな手作り雑貨&アクセサリー、お弁当、パン、焼き菓子、ハーブティーなど。
楽しいワークショップも開催!

日時|2026年4月29日(水・祝日)
時間|10:00-16:00
場所|サンレイクかすや 多目的ホール(福岡県糟屋郡粕屋町駕与丁1-6-1)

春のにゃぴ祭り

猫も人もみんにゃハッピー!猫雑貨やハンドメイド雑貨など、80のお店が大集合します。

日時|2026年4月5日(日)
時間|10:30-15:30
場所|宗像ユリックス本館イベントホール(福岡県宗像市久原400)

アートなガーデンパーティ

あそんで!つくって!たべて!きいて!
春の庭が、たのしいあそび場に✨

日時|2026年4月4日(土)
時間|10:00-16:00
場所|Grandma house(糸島市志摩桜井4226-4)

角材彫刻家 前原正広個展 『木のカケラ展』

角材彫刻家 前原正広さんの猫と犬と鳥だらけの個展が開催!彫刻だけでなく、絵画も展示予定です。

日時|2026年4月2日(木)~26日(日)
時間|11:00~18:00
場所|gallery&cage空のいろ(福岡県うきは市浮羽町朝田377-167)

Luminey Marché ルミニーマルシェ

焼き菓子やアパレル、イラスト雑貨、占いなどの癒しコンテンツなどが楽しめるイベント🎉

日時|2026年4月25日(土)
時間|11:00~
場所|CAITAC SQUARE GARDEN(福岡市中央区警固1丁目15-38)

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