どんな気分にも寄り添える場所でありたい ミタニコーヒー

コーヒーや空間を通したコミュニケーション
木の柱や床を、自然光が柔らかく照らす店内。カップやお皿、置いてあるものの一つひとつから温かみを感じられるこのお店は『ミタニコーヒー』。福津と宗像のちょうど真ん中あたり、緑豊かな集落で、古民家を改装して作られた喫茶店だ。
店主は三谷晃代さん。約5年間、飲食店で経験を積みながら、イベント出店型のコーヒー屋として活動したのち、この場所に店舗を構えた。焙煎からメニューの仕込み、接客までを、すべて一人でおこなっている。コーヒーの淹れ方は、エアロプレスというちょっと珍しい抽出方法。木のカウンターの内側で、全身の力を使ってコーヒーを淹れている彼女の姿がミタニコーヒーならではだ。
「全部一人でやっているお店って珍しいんですけど、私はここでおばあちゃんになるまでやっていきたいなって思ってます」
奥まった静かな場所で、一人で喫茶店を営むことを決めたのはどうしてなのか。三谷さんの話から見えてくるものがあった。
教師を目指していた学生時代

三谷さんがコーヒーの道に興味を持ったのは大学生の頃。長年抱いていた教師になりたいという夢を諦めなければならない状況になってからだった。
「教育実習がかなりハードで、同時に他の活動でも忙しくしていて、体調を一気に崩してしまったんです。半年近く入院して、『先生になるのは無理だな。私の体が一瞬で潰れてしまう』って気づいたんです」
じゃあ自分は何がしたいのか、何になりたいのか考えるようになり、当時アルバイトをしていたコーヒーチェーン店での仕事を思い出したという。
「コーヒーを淹れるっていう行為が好きだったんですよ。コーヒーを淹れて、お客様に渡して会話をするっていう過程がいいなって。飲むのも好きだけど、こっち(カウンターの内側)に立ちたいと思って」
それから色々なカフェを調べ、気になったお店にはとにかく足を運んだ彼女。そんな中、あるお店との出会いが『私もカフェをやりたい』と思うきっかけになったそう。
「空間も、コーヒーもフードも接客も全部素晴らしくて、トータルバランスがすごくいい。そのお店に行きたいと思う時って『あれを食べたいから行く』じゃなくて『とにかくあの空間に行きたい』なんです。そのお店での体験があったから、今の自分の店でもトータルバランスをすごく考えています」
一人でできるのは、一人じゃないから

大好きなお店で感じたトータルバランスの大切さを、自身の店でも意識している三谷さん。
「空間とコーヒーとおやつ、その全部があってミタニコーヒーだと思っているので、どれかが下がったり無くなったりしても違っていて。そのバランスは常に一定に保っていたいんです」
その想いが、三谷さんがすべての工程を一人でおこなう理由にもなっている。
「色んなチームで働いてきたので、誰かが居ることで化学反応が起きたり、違う空気が生まれたりすることも分かるんですけど、私がこのお店で表現したいことを完璧に表現するためには、私が全部に手を通すことが不可欠だと思っていて。コーヒーもおやつもサービスも、誰かに任せるのはまた違う話で、基本的には全部自分でやりたいんです」
彼女がすべてに手を通し、表現しているミタニコーヒーには、今までお世話になった先輩・師匠から頂いたメニューや器具が受け継がれている。店内も、親身に希望を汲み取ってくれる建築士と作り上げた唯一無二の空間だ。店舗を持つと同時に始めた焙煎は、迷ったときに相談に乗ってくれる師匠や仲間がいるからこそ続けられているという。一人でやっていくことを選び、日々それを続けられているのは、彼女がたくさんの人と繋がり、支えあっているからだろう。
この空間を守る理由

三谷さんがミタニコーヒーに定めるコンセプトは『元気なときもそうじゃないときも、いつでも来られる場所』だ。
「しんどいな、もやもやしてるなってときに行ける場所って、私にとっては限られていて、そんな時に『あ、ミタニコーヒーに行こう』って思い出してもらえるようになりたいです。この空間にいることで、ちょっと回復して、ちょっと背筋が伸びて、明日へのパワーが生まれていくような場所になったらいいなって」
お客様にそれぞれの時間を過ごしてほしい、お客様それぞれの時間を守りたいという想いから、机の向きや各席の配置、距離も調整して店内を作っているそう。
「予約や写真撮影にルールを設けているのも、お客さんの時間を守るため。万人受けするお店ではないかなと思っているんですけど、来てくれるお客さんはそこも理解してくれていて。お店として一番いい形だと思います」
わからないからやってみる

ミタニコーヒーという店舗を持つまで、様々な飲食店で経験を積み、理想のお店のイメージを作り上げていった三谷さん。何かにチャレンジするときは、とにかくやってみようと思うタイプだと笑顔で話してくれた。
「お店を持つって決めた時も、古民家ならではの大変なことはいっぱいありました。いろいろな飲食を経験したきたけど、立地もメニューも全然違うので、一回一回わからないんですよ。でも助けてくれる人がいるし、助けてって言えるようになる。とにかくやってみないと何もわからないです!」
コーヒーに興味を持った頃から今現在も、とにかく自分の足で動く、やってみるというスタイルは変わらない。
「私はとにかく自分の足で稼ぐしかないと思ってるタイプなので(笑)話を聞きに行くのも自分で。好きなお店や気になるお店に行って、そこのオーナーさんに勇気を出して話しかけて、色々教えてもらったり、応援してもらったり。その結果、今の自分がいると思います」
不安や悩みがあるときこそ、勇気を出して一歩動いてみる三谷さんの姿は、コーヒーに限らず、何かにチャレンジしたい人の背中を押してくれるように感じる。
ミタニコーヒー
〇所在地:福岡県福津市奴山507−1
〇ホームページ:https://linktr.ee/mitanicoffee
〇定休日:木、金
〇営業時間:月・火・水 / 13:00~18:00(17:30ラストオーダー)
土・日・祝 / 13:00~16:45 web予約制 16:45~18:00 通常営業(17:30ラストオーダー)
※変動あり。営業状況、駐車場、予約等はインスタグラム@mitanicoffe にてご確認ください。
〇所在地:福岡県福津市奴山507−1
〇ホームページ:https://linktr.ee/mitanicoffee
〇定休日:木、金
〇営業時間:
月・火・水 / 13:00~18:00(17:30ラストオーダー)
土・日・祝 / 13:00~16:45
web予約制 16:45~18:00
通常営業(17:30ラストオーダー)
※変動あり。営業状況、駐車場、予約等はインスタグラムにてご確認ください。