可憐なドレスの裏にある、揺るがない意志 。ドレスデザイナー MIKI

『ドレス』と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、華やかで、可憐で、特別な一着ではないだろうか。

結婚式という人生の節目に身につける、花嫁のための衣装。
その一着には、憧れやときめきだけでなく、着る人の人生や想いまでもが重ねられている。

そんなドレスを、仕立てるだけでなく、ヘアメイクやスタイリングまで含めて花嫁に寄り添いながら手がけている人がいる。

ドレスデザイナーのMIKIさん。

「華やかな仕事に見えると思うんですけど、実際はずっと裏方ですね。体力も気も使います」。

そう言ってやわらかく笑う表情の奥に、好きなものを諦めずに形にしてきた、静かな覚悟があった。

MIKIさんがドレスに惹かれたのは、3歳の頃。
きっかけは、幼い頃に見た『シンデレラ』の絵本だった。

ページの中に広がる美しいドレスを見て、「こんなものを作る人になりたい」と思ったという。

そこから、ビーズや編み物、キルティングと、手を動かすことが日常になっていった。
誰かに言われたからではない。
好きだったから、自然と続けていた。

しかし、好きなものを仕事にするということは、憧れの延長だけでは済まない。

現在、MIKIさんは花嫁のための一着を手がけている。

ただドレスを作るだけではなく、当日のヘアメイクやスタイリングにまで関わり、その人が一番美しく見える形を探っていく。

結婚式当日の完成された姿だけが見える世界。
けれどその裏には、何度もの確認、細かな準備、そしてミスが許されない現場を支える緊張感がある。

「何も起きない状態」をつくること。
それもまた、MIKIさんの仕事だった。

泣きながら始まった、初めての海外

独立前、企業デザイナーとして下積みをしていた頃、MIKIさんには特に印象に残っている出来事がある。
それが、初めての韓国出張だ。初めての海外であり、初めての一人出張でもあった。

言葉は分からない。土地勘もない。
紙に書いたハングルと片言の英語だけを頼りにタクシーに乗ったものの、見知らぬ場所で降ろされてしまった。

「もうどうしていいか分からなくて、泣きながら会社に電話しました」。

地元の食堂にも入れず、バスの乗り方も分からない。
仕事をする以前に、そこで生活するだけでも精一杯だった。

だがその辛い経験はMIKIさんにとって大きな転機となった。

「このままじゃダメだなと思いました。せっかく行かせてもらってるのに、何もできないのは悔しかったので」。

そこから、がむしゃらに韓国語を覚え始めた。
聞いた言葉をカタカナでメモし、口に出して覚える。
接待の場などで、発音を確認しながら少しずつ身につけていった。

器用にこなしたわけではない。
ただ、“できないままにしなかった”。

「みんなと同じ」が、しっくりこなかった

MIKIさんは、学生時代から周囲の空気に違和感を覚えることがあったという。

「みんながやってるから私も、っていうのが、私にはあまり馴染めなくて…」。

人は人、自分は自分。
物心ついた頃からそんな意識があって、無理に周囲に合わせようとは思わなかった。

小学生の頃にはバンドを組み、自分で作った衣装を着てステージに立っていた。
人前に出る機会も多く、そのぶん、面白く思わない人から陰口を言われることもあったのだそう。

それでも、MIKIさんはあまり気にしていなかった。

強がりもあったのかもしれない。
けれどそこには、自分の“好き”を簡単には手放さない意志もあった。

周囲に合わせれば、楽になる場面もある。

それでもMIKIさんは、違和感を抱えたまま流されるより、自分の感覚を信じるほうを選んできた。

“分からない人”に、寄り添うために

ドレス選びは、多くの人にとって初めての経験だ。

「シンプルなドレスがいい」と言われても、その“シンプル”が何を指すのかは人によって違う。

だからMIKIさんは、まず自分の中の当たり前を置くようにしているという。

「自分の中の“普通”を一回置くようにしています」。

相手は何を求めているのか。
どこで迷っているのか。
何に不安を感じているのか。

会話の中から、まだ言葉になっていないイメージを少しずつ拾い上げていく。

「分からないことが分からない方も多いので、こっちから提案するようにしています」。

それは、単なるサービスではない。
お客様の中にある曖昧な感覚を読み取り、安心して選べる状態をつくる力だ。

華やかな提案よりも、地味な気配りの積み重ね。
その細やかさこそが、MIKIさんの仕事の根幹にある。

全部が止まった日々の中で

そして、大きな転機であり、同時に大きな試練も訪れる。多くのウェディング業界が頭を抱えた、コロナ禍だ。

2店舗目を出して間もない頃。
これから少しずつ軌道に乗せていこうとしていたタイミングで、状況は一変した。

入っていた予約は次々とキャンセルに。
すでに受け取っていた金額の返金対応にも追われた。

「お金が一気に出ていく感覚が怖かったです」。

売上は止まっている。
けれど、支払いは止まらない。
家賃、固定費、スタッフの給料。

止まってもいいものは、ひとつもなかった。

「とりあえず今月をどうするか、来月をどうするか、っていうことしか考えられなかったですね」。

先の見通しは立たない。
再開の目処も分からない。

それでも、決断だけは迫られる。

会社を守るのか。
縮小するのか。
人を守るのか。
自分を守るのか。

どれも簡単には割り切れない選択だった。

「正直、何が正解か分からなかったです」。

そんな中で、MIKIさんは飲食事業を始めた。
韓国カフェという形で、新しく店を立ち上げたのだ。

ブライダルとはまったく違う分野。
けれど、テイクアウトやデリバリーなら、まだ動かせる可能性があった。

「今考えると、結構思い切ってたなと思います」。

経験があったわけでも、確信があったわけでもない。ただ、このまま何もせずに時間が過ぎることが、一番怖かった。

仕入れ、メニュー開発、オペレーションづくり。
慣れないことばかりで、毎日が手探りだった。

「全然うまくいかないことも多かったですね」。

それでも止めなかった。

「何もしないで潰れるよりは、何かやって潰れたほうがいいかなって」。

半分は勢いだったのかもしれない。
でも、その勢いがなければ動けなかった。

うまくいく保証なんて、どこにもなかった。

それでも、“何かしている状態”を保つことで、かろうじて前を向くことができた。

「正直、この頃はあまり記憶がないです」。

毎日やることに追われ、考える余裕もなかった。
振り返ろうとしても、ところどころ抜け落ちている。

それほど、ぎりぎりの時間だった。

走り続けたあとに

コロナ禍をきっかけに、MIKIさんは自分の働き方を見直すようになった。

それまでは、ほとんど休みなく働いていた。
やりたかったことも、後回しにしていた。

「このままで大丈夫なのかなって、初めてちゃんと考えました。やはり体調も崩しがちになったので」。

今は、週に一度は休みを取るようにしている。
沖縄へ旅行に行ったり、大好きなサウナに行ったり。
以前よりも、少しだけ余白を持つ働き方に変えた。

無理をしてでも続けるのではない。
続けるために、変える。

その判断ができるようになったことも、大きな変化だった。

まだ届いていない人へ

今、MIKIさんが課題に感じているのは、自分のドレスをもっと多くの人に届けることだ。

「まだ来店された方にしかご案内できていなくて」。

思うように広げられていない現状に、もどかしさもあるという。
全国に届ける方法を、今も模索している。

「やりたいことはあるんですけど、まだ追いついてない感じです」。

完成された状態ではない。
けれど、だからこそ今のリアルがある。

きれいに整えられた物語ではなく、悩みながら、試しながら、それでも進んでいる途中の姿。
その歩みこそが、MIKIさんらしさなのかもしれない。

好きだけでは続かない。それでも、やる

MIKIさんは、「仕事は何をするかより、誰とするかが大事」と話す。

どんな仕事も、環境や人との関係によって、続き方が大きく変わる。
だからこそ、自分も誰かにとってプラスでいられる存在でありたいと考えている。

感情的になってスタッフを叱らないよう、普段から意識しているという。
その場の感情で言葉を発しないために、ルールやマニュアルを整え、いったんクールダウンする。
気持ちが落ち着いたタイミングで、改めて伝えるようにしている。

中学生の頃の自分に声をかけるなら、こう伝えたいという。

「とにかく挑戦して。うまくいかないことも多いけど、諦めなければ近づくから」。

好きなことを仕事にするのは、簡単ではない。
むしろ、好きだけでは続かない場面のほうが多い。

華やかに見える仕事ほど、裏側には地道な準備がある。
きれいに見えるものほど、泥くさい現実に支えられている。

それでも、やめなかった人だけが、少しずつ形にしていく。

MIKIさんの仕事は、誰かを輝かせる仕事だ。
けれどその裏には、自分自身の“好き”を守るために、何度も踏みとどまってきた時間がある。

きれいなだけでは続かない。
でも、きれいだと思えるものを、やっぱり手放したくない。

その間で揺れながら、それでも続けてきた人の姿が、今のMIKIさんをつくっている。


instagram:dresscoco_miki

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