飾らない自分で、選んだ道を愛して進む。 イラストレーター ひふみ

大人になるということは、何かを選び、何かを諦めていくことの連続だ。
歳を重ねるほど、可能性が広がるワクワクよりも、
“選ばなかった道”をふと意識する瞬間が増えていくのかもしれない。
ゆったりとした時間が流れる、福岡県久留米市。
この街で今回話を聞いたのは、イラストレーターのひふみさん。
彼女が描くのは、見た人の心をふっと軽くするような、
ゆるくて、あたたかいイラストたち。
「イラストやデザインは全く学んでなくて。写実的な絵とか、細かい絵とかはそもそも描けないんです」。
そんな彼女が立ち上げた「ヒフミ社」の紹介文は、一風変わったもの。
『イラスト、写真、動画、文章の他にも、犬の散歩や猫の爪切り、腕時計の電池交換、食器洗い、色鉛筆削り、トイレットペーパーの補充などお気軽にご相談ください。』
この一文には、ひふみさんの “生き方” が詰まっていた。
「得意じゃない」から始まる道もある

小さい頃から絵を描くことは好きだった。
ノートの端に描く落書き、友達への手紙に添える小さなイラスト。
“大好き”というより、”なんとなく好き”の延長線。
「周りには絵が上手な子がいっぱいいて。私はそこまで上手くないから、ちょっと落書きする程度で」。
絵の教室に通う同級生もいる中で、自然と自分の中から将来の選択肢が消えていく。
“きっと、絵で食べていける人は一握りなのだろう”
自分には絵を習いに行くほどの熱量もないし。
「今思うと、コンプレックスのようなものだったなと」。
“絵で稼ぐなんて、私には…”
そうして絵の道を選択肢から外したまま、高校、大学、そして就職。
全く関係のない場所へと歩みを進めた。
ふと気づく、”未来の自分への違和感“

大学を卒業後、会社員として働きながら、7年ほどが経ったある日、
30歳を前にした自分にふと問いかけた。
『40歳、50歳になってもこの仕事してるのか?』
『未来の自分は、本当にのびのび生きているのか?』
将来へ、そして自身の生き方への漠然とした違和感。
ちょうど大きな仕事に区切りがつき、転職も視野に入れていた。
そんな時、彼女の落書きを、普段から何気なく見ていた夫からの一言。
「(絵を)描いてみたら?」
その言葉が、閉ざしていた“描く仕事”への憧れをゆっくりと動かす。
自分の好きなタッチ、好きな絵を思うままに描いてみる。
そして、SNSに絵を投稿し始めたある日、
友人から「絵を買いたい」というメッセージが届いた。
「創作活動に専念をしていくのもいいのかなと思って。甘い考えかもしれませんが 、1回好きなことをやってみて、ダメならまた他の職を探せばいいかな、って」。
積み上げたキャリアを手放し、絵を生業にしていく。
そこに不思議とネガティブな気持ちはなかった。
むしろ、ワクワクが勝っていた。
彼女の前向きな気持ちは、背中を押してくれた周囲の人たちにも、しっかり伝わっていたのだろう。
「傍から見ても迷いがなかったのかもしれないです。 どうなるか分からないけど、それが案外、楽しい方向に行くんじゃないかって」。
会社を辞めると同時にイベントにも出店。
『もっといろんなものを作りたい!』
『これをやったら、もっと楽しそう!』
そう思うものが、次々と頭に浮かんでくる。
そして、自分で作ったものが初めて売れた時の、喜びと感動。
それが彼女の創作意欲をさらに膨らませていく。
苦手を“苦手なまま”抱えて進む

伸びやかなタッチと、パワフルな色使い。
ひふみさんから生まれてくるイラストたちには、子供心をくすぐるような愛らしさがある。
自身の絵に対してコンプレックスを感じていた学生時代から時は経ち、
大人になった今、それが自分のスタイルになりつつあるそう。
「専門的な勉強をしている人はたくさんいるので、それを否定するつもりは全くないです。でも私に関しては、習っていないからこそ今の絵が描けているのかなと思っています」。
経験してきたこと、見てきた景色、出会った人。
その全てが、彼女の絵の“味”になっている。
全く同じ人生を辿った人が居ないように、いくら真似ようと近づけたとしても、違う人物や生成AIからは、全く同じ絵は生み出せない。
「学んでいないなりの絵にも、変な個性があって面白いじゃないですか。だからちょっとずつ上達してるくらいでもいいのかなって」。
自分らしさに誇りを持って、未完成な技術を楽しみながら描く日々。
『正解』を追い求めない彼女の絵は、ゆっくりと時間をかけて変化していく。
「あなたの隣にいるデザイン事務所」を目指して

イベント出店を続けるうち、子ども向けのワークショップやノベルティ制作、店舗のステッカー依頼など、少しずつ仕事の幅も広がっていった。
そして、退職から一年。夫と二人、「ヒフミ社」として改めて活動を始める。
「”デザイン事務所”ってなんかシュッとしててかっこいいイメージだったんですけど、そうじゃないデザイン事務所もあっていいよね、って」
もちろん大きな依頼も受けてはいきたいが、目指すのはもっと人々の生活に近い存在。
ヒフミ社のPR文にある「犬の散歩」「色鉛筆削り」「トイレットペーパーの補充」。
「『犬の散歩します』っていうメッセージも、ふざけ半分、ほんと半分みたいな(笑)」
『誰かの、”ちょっと困った”に寄り添える存在でいたい』
という、ひふみさんの想い。
地域の中で、小さな依頼にも全力で応える。
それがヒフミ社のスタイルだ。
道は絞らなくていい。揺れながら進めばいい。

「最近だと、行きつけのラーメン屋さんから、『60周年だから、記念にステッカー作れる?』って、言ってもらって」。
大都会で見るような煌びやかなポスターや、洗練されたデザイン広告というよりも、
もっともっとローカルで、身近にある需要。
「例えば、『今度、公民館でイベントするから、チラシ作っちゃらんか?』とか言われたらめっちゃ嬉しいですね(笑)そういう所にも、私たちにできることがあると思うんです」。
新しい文化を生み出すことよりも、老若男女、より多くの方に知ってもらい、些細な日常にも寄り添う。そうして、輪の広がりや交流のきっかけを作る。
ひふみさんの創作はイラストを描くに留まらず、時に刺繍をしたり、粘土をこねたり、紙を切り貼りしてみたり…。
経験のない分野の依頼も、その都度 思考錯誤を繰り返し、自身の糧にしていく。
「ブレてるって思われるかもしれないけど、自分で道を絞り過ぎたり、狭めちゃうと、しんどいというか….。どの道も面白そうだな、って思うので」。
声を掛けていただけたことに、真っ直ぐに向き合う。
それが、また次の仕事につながっていく。
そんな連鎖が、彼女の人生をゆっくりと形づくっていくのだろう。
“誰でも描けるかもしれないけど、自分にしか描けない絵”を

目標は、『続けていくこと』
大きなゴールを掲げるというより、まずは目の前の道を踏みしめて。
新たな出会いと挑戦を求めて歩んでゆく。
“焦って何者かになろうとしなくていい。
等身大で生きた時間、そのすべてに意味がある”
ひふみさんの絵は、見る人にそう語りかけてくる。
忙しない毎日の中でも、たまには力を抜いて。
流れるように自分の行きたい場所へ行ってみる。
やりたいことをやってみる。
その方が、きっと面白い。
そして、
“人より得意じゃなくっても、好きな道を選んでいい“
そう静かに教えてくれる。
【Instagram】
ひふみさん:@hifumi_oekaki
ヒフミ社:@hifumisha123

この記事の執筆者
「デザイン事務所 ヒフミ社」 の代表を勤め、”面白い”を求め思うままに日々創作を続けるイラストレーター。
イラスト以外でも、写真、動画、文章の他、犬の散歩や猫の爪切り、腕時計の電池交換などの依頼も受ける。
『ヒフミ社』の上のマークは、漢字の「一、二、三」(ひふみ)を表している。
【開催終了】森のこみち こもれびvol.2
さまざまな手作り雑貨&アクセサリー、お弁当、パン、焼き菓子、ハーブティーなど。
楽しいワークショップも開催!
日時|2026年4月29日(水・祝日)
時間|10:00-16:00
場所|サンレイクかすや 多目的ホール(福岡県糟屋郡粕屋町駕与丁1-6-1)
【開催終了】春のにゃぴ祭り
猫も人もみんにゃハッピー!猫雑貨やハンドメイド雑貨など、80のお店が大集合します。
日時|2026年4月5日(日)
時間|10:30-15:30
場所|宗像ユリックス本館イベントホール(福岡県宗像市久原400)
【開催終了】よりみち寺
あたたかい春の日差しの中、ちょっとよりみちしていきませんか?
日時|2026年3月22日(日)
時間|10:00-15:00
場所|妙福寺(福岡県糟屋郡篠栗町中央6丁目30-1)
【開催終了】ハレマルシェ vol.7
6日間で合計47店舗が大集合!
家族で楽しめるマルシェとなっております。
日時|2026年3月17日(火)〜22日(日)
時間|10:00-16:00 ※3/19のみ15:00まで
場所|アクロスモール春日2階正面広場
(福岡県春日市春日5丁目17)
【開催終了】おいでよ!ドーナツと小さな絵本市
消しゴムはんこあり!ドーナツあり!読み聞かせあり!こども服あり!なイベント。約200冊以上のえほんが並びます。
2026年2月27日(金)〜28日(土)11:00〜16:00
じゅういちくみ(裏)
(福岡市東区箱崎1-32-4)
【開催終了】消しゴムはんこで浮世絵体験
葛飾北斎の『富嶽三十六景』を消しゴムはんこで再現!
日時|2026年3月7日(土)
時間|11:00-、12:00-
場所|ninatte九州(福岡市東区筥松3-6-35)











