もったいないの気持ちが拓く、ふるさとの未来 「太陽と月の酵素カフェ」

~全ての物事に循環を~
「もったいない」が光に還る場所

橘湾を見下ろす丘の上、緑に囲まれた雄大なロケーションに思わず深呼吸してしまう。

長崎市街地から少し離れた坂の街、芒塚町にある「太陽と月の酵素カフェ」。

扉を開くと、シロップ瓶に入った色とりどりのドリンクが迎え、ガラス扉を隔てたスペースには数種類のトレーニングマシンが並ぶ。ここでは太陽と月を象徴するかのように、個々に合わせた食事と運動のバランスを提案。自然豊かで開放的な空間と共に、美味しく健康的な時間を提供してくれる。

棚一面のドリンクは、満月や新月、日本の二十四節気の日を意識して、その日のエネルギーとともに仕込まれた酵素ドリンクなのだそう。

「耕作放棄地で、収穫されずに落ちてしまう果実はもったいない」

そう感じたオーナーは、これを生かす方法はないかと試行錯誤し、酵素づくりを始める。その酵素は現在50種類以上にも広がり、店内ではそれらを自由に選ぶこともできるが、それぞれの健康状態に合わせた酵素ドリンクの提案もしてくれる。

この空間を創ったのは内藤 恵梨さん。株式会社ENの代表取締役として、「太陽と月の酵素カフェ」やパーソナルジムの運営だけに留まらず、「もったいない」を生かし光に還るための様々な取り組みも行っている。

きっかけはキャンドルのリサイクル

”ふるさと長崎の山野草の押花で彩られたリサイクルキャンドル

絶やすには「もったいない」伝統のお味噌

”親しまれてきた味噌と、地域のもったいない野菜から生まれた「おかず味噌」

「よかったら召し上がってみてください」

まだ肌寒い早春の取材時、内藤さんにいただいたシチューが懐かしくて温かい。オリジナルの一皿には隠し味にお味噌が入っていた。

郊外の香焼町のおばあちゃんたちが、長年手作りしてきた「恵のみそ」。コロナウィルス感染の広がりが地域の営みをも変えていく中、この「恵のみそ」づくりも途絶えてしまいそうになる。これを継承し、長く親しまれてきた味を守ったのも内藤さん。

「高齢化やコロナの影響で味噌づくりの伝統が引き継がれないのはもったいない」と、新たな食品製造許可を得て、製造所も新設したのだという。「そのために、愛車の大型バイクも売っちゃいましたけど」と笑う内藤さんだが、その瞳は優しくて力強い。先の未来を見ているかのようだ。

現在は、従来の味噌商品に加え、形が曲がっていたり少し傷が入ったりした野菜など、市場には出せない廃棄野菜を買い取り、これを味噌に混ぜて考案した「おかず味噌」も販売。取材後、内藤さんのお心遣いで、この「おかず味噌」をお土産にいただいたのだが、味噌とは思えないほどまろやかな味で、生の野菜やご飯にのせてと、大いに食が進むおすすめしたい逸品である。

たくさんの「もったいない」を掛け合わせて、新たな魅力を生みだす内藤さんの活動には、いささかのあきらめや妥協も感じられない。その使命の光は、周囲の人や地域を包み、まっすぐに伸びていく。

未来を担うふるさと教育

”ふるさと長崎の自然を生かした新たな魅力づくりを

「市場に出せない野菜を利用することは、地元農家さんの応援にもつながります。今はふるさと教育の一環として、学生たちと一緒にもったいないを生かした商品づくりにも取り組んでいます」

ふるさと長崎県の未来を担う高校生の育成事業として、ゼミ生60名に、「もったいないを生かした地域循環のかたち」を伝える内藤さん。

これまで味噌を使った「みそめる(麦みそ×キャラメル)」や「コッコデ塩(塩レモンゼリー)」、「竹炭スイーツ(竹炭パウダーを使用)」など、長崎の解決すべき課題と併せて、学生たちが考案したオリジナル商品も開発してきた。企画から販売会までの一貫した活動を体験することで、長崎の魅力を再認識した学生たちは、きっとふるさとの未来を拓く頼もしい担い手となっていくことだろう。

町のおばあちゃんから継承した味噌づくりは、その歴史や想いを紡ぎ、家族や地域の絆を深めていく。

その絆と新しい可能性を繋ぐ「結び目」として、内藤さんの描く放射状の輪は、どこまでも拡がっていく。

竹林を食べて綺麗にしよう

”共感の輪は大きく広がり、地域の思いを一つにしていく

「もったいないを生かす取り組みはどんどん広がって、今は竹林整備のボランティア活動も行っているんです」

内藤さんが設立した森林ボランティア団体「TAKENOEN」による竹林整備は、土砂崩れを減らし、竹を効率的に利用することで環境保護につなげていくことを目指している。

カフェのお客さんや学生、地域・自治体にもその共感の輪は広がり、ふるさと長崎を守り育てる思いは一つになり、大きく膨らんでいく。

竹炭パウダーでクッキーを作ることにも挑戦。

「若い人たちにも竹林整備を体験してもらうことで、林業に興味を持ってくれる学生も増えてきたんです。机上だけではなく体験から学ぶことは、地域の課題や環境問題について考えるきっかけにもなります」

豊かな自然環境を守るために重要な林業は、地域経済や雇用にも貢献し持続可能な未来への鍵となる。

身近にあるものや自然で、地域に新たな絆と 希望の燈を

”地域の課題にまっすぐ向き合い、常に笑顔で取り組む内藤さん

「特別なものでなくていい。身近にある『日常で愛される地域のもの』で生きていきたい」という内藤さんの思い。

捨てられて仕方なかった「もったいないもの」は、光となり、キャンドルとともにふるさと長崎を照らしていくだろう。

太陽と月の酵素カフェ
長崎県長崎市芒塚町239-3
ホームページ:https://www.en-nex.co.jp/enzyme-cafe.php

内藤恵梨
ホームページ:https://www.en-nex.co.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/elly_wasabi/

この記事の執筆者

ninatte事務所

ninatte九州の運営事務局です。銭湯跡地、旧梅乃湯を拠点に活動中♨事務局ライター数名で日々記事を更新しています。

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Enzyme cafe太陽と月の酵素カフェ

長崎県長崎市芒塚町239-3
ホームページ:https://www.en-nex.co.jp/enzyme-cafe.php

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