「好き」が高じて仕事に。グルテンフリーのチーズケーキ屋『チーズケーキのyamagaya』

響灘や遠賀川に囲まれた福岡県遠賀郡芦屋町。自然や文化財が多く、のどかな雰囲気の町だ。今回訪れたのは、芦屋町の商店街から一本入った通りにあるグルテンフリーのチーズケーキ屋『チーズケーキのyamagaya』さん。2022年11月1日にオープンした、野田茂生さん、里実さんご夫妻が営むテイクアウト専門のチーズケーキ屋である。ご主人の茂生さんは製作担当、奥様の里実さんは広報担当と役割分担し、日々お客様にスイーツを届けている。普段あまり見かけないグルテンフリーのスイーツをなぜ作ろうと思ったのか、その経緯やこだわり、野田さんご夫妻らしい生き方について、詳しく聞いてみた。
グルテンフリーのチーズケーキ きっかけは「家族への愛情」

スイーツ作りのなかでも、「グルテンフリー」にこだわった理由は?
【茂生さん】「それは私の妻や子どもがアレルギーで、食べられるものが限られていたからです。とくに一般的なスイーツはほとんどが小麦粉と卵を使用しているため、妻と子どもは食べられませんでした」
茂生さんは時間があれば一人で食べ歩きをするほど、食べることが大好きなのだそう。
「世の中にある数々のおいしいものを、ちょっとでも多く家族に食べさせてあげられる方法はないかなとずっと考えていました。私は料理も大好きで、よく『〇〇店の味を再現!』のようなレシピを見て自分で作っていたんです。その一環でグルテンフリーのスイーツを作ってみたら、これが結構身内に好評で。自分のお店を開きたいっていう夢もあったので、本格的に始めてみようと思い、開業することになりました」
「家族においしいものを食べさせたい」そんな愛情深い茂生さんの想いが、広く世間の人をも幸せにするきっかけとなった。
「ちなみに当時私が作ったケーキは、主に妻が食べてくれていたんですよ」
一番身近な存在である家族がおいしそうに食べてくれていたことが、開業への意欲をさらに後押ししたのかもしれない。
さまざまな業界での勤務経験からたどり着いた現在の生き方

【茂生さん】「私は開業するまで、たくさんの業界で働いてきました。たとえば花屋や介護タクシーの運転手など。会社員としてではなく、好きな料理かスイーツを作りながら自分らしいライフスタイルを確立したいとずっと思っていました。今は、お客さんに『おいしかったのでまた来ました』と言ってもらえたり、インスタでチーズケーキを紹介してもらったりすることにやりがいを感じています。それが一番のモチベーションで、もっと喜んでもらいたいと思いますね」
これまで多くの経験を重ねたからこそ生き方について悩み、本当に好きなことを貫く気持ちを大切にできたのだろう。
【里実さん】「主人は本当に、人に尽くすのが趣味みたいなタイプです(笑)お客さんがきたらサービスでお茶を出したり、子どもさんにはお菓子をあげたり。人が大好きなんですよね」
チーズケーキよりも、ご夫婦に会いに行くためにお店に行く人もいるのではないかと感じた。
野田さんご夫婦はそれくらい明るく気さくで、店全体に幸せオーラが溢れている。
「お客様に喜んでもらいたい」想いと「生きていかなければならない」葛藤

生き生きとしている野田さんご夫妻だが、これまで困難なことはなかったのだろうか。
【茂生さん】「リアルに売り上げのことで夫婦げんかになることはありますよ(笑)ありがたいことに忙しくさせていただいていますが、すべてが順調というわけではありません。お客さんに喜んでもらいたい一心でサービスするものの、やはり私たちも食べていかないといけませんからね。その葛藤に頭を悩まされます」
純粋に、多くの人にチーズケーキを食べてもらいたいという気持ちが溢れている。
【里実さん】「主人がチーズケーキを作ってくれるので、私は広報活動を頑張っています。久留米や久山など、少し遠いところにもイベント出店したりSNSを有効活用したり。あとは、週に2回は岡垣の車通りが多い場所で販売も行っています。そこは通りすがりの人の目につきやすいため、新規のお客さんが来てくれるんです。そんな風にサポートをして、主人には製作に集中してもらいたいですね」
夫婦二人三脚で困難なことを乗り越えながら、自分たちらしい生き方を模索している様子がうかがえた。
yamagayaはまだ道のりの途中

yamagayaの最大の特徴は、グルテンフリーのスイーツだと思わせない食感や味。
そこにどんなこだわりがあるのだろうか。
【茂生さん】「私がグルテンフリーのチーズケーキを作る際、全国からお取り寄せしていろいろなお店のケーキを食べました。でもどれも、価格が高かったりもっとこうだったら自分の好みになるのになと思ったり。とにかく作るなら自分が『おいしい』と思えるまで徹底的に追求しようと思い、材料の配合などを変えながら100個以上は試作品を作りましたね。『お買い求めやすい価格』という点にもこだわりました。そして現在のチーズケーキが完成するわけですが、今後もバージョンアップする予定です。もっと良い味を出せるかもしれないし、食感も進化させられるかもしれない。お客さんに満足してもらうために、日々いろいろ考えています」
茂生さんの「職人気質」な面がしっかりと伝わってきた。
グルテンフリーのチーズケーキで芦屋町を盛り上げたい

今後の展望について、ご夫婦に聞いてみた。
【茂生さん】「今も芦屋町のイベントには参加しているのですが、もっと積極的にグルテンフリーのチーズケーキで地域を盛り上げていきたいですね。すぐ近くに老舗の豆腐屋さんがあって、そちらとコラボして作った『プリン豆腐レアチーズケーキ』も販売しています。町内にスイーツショップがいくつもあるので、うまく共存してみんなで芦屋町に人を呼び込みたいです。それと、先々店舗を増やしたりカフェをしたりしたいですね。よくお客さんから『ここで食べられないんですか?』って聞かれるので、いずれイートインスペースを作りたいです」
【里実さん】「グルテンフリーのチーズケーキが芦屋町の特産品に選出されるよう、頑張って動いています。また、ふるさと納税の商品登録に向けても準備を進めているところです。芦屋町役場の方も協力的で、新しい商品の開発のヒントをくれることもあるんですよ」
芦屋町がバックアップしてくれるのは心強い。
そして地域全体で芦屋町を盛り上げるための施策を行い、且つそれぞれの作り手が個性を十分発揮できるようお互い助け合っている印象だ。
【里実さん】「それと今後は主人に教えてもらいながら、私もチーズケーキを作れるようになりたいですね」
野田さんご夫妻は、目標に向けてこれからもyamagayaを進化させていく。
一緒にスイーツを作ってくれる仲間は喜んで受け入れる

アレルギーがあるため、グルテンフリーのスイーツ作りに興味を持つ人が多いのではないだろうか。
【茂生さん】「当面の間は夫婦で頑張っていく予定ですが、もしスイーツ作りを教えてほしい、という方が現れたら作り方をお伝えすることは可能です。現在スフレとチョコスフレのみ全国に発送可能でして、そちらも徐々に注文数が増えています。普通のチーズケーキとして認知いただきお買い求めになるお客さんが多いなかで、グルテンフリーを求めている方もいるため、そこに需要の高さを感じます。県外の方からもお問い合わせいただくのはうれしいですね」
【里実さん】「グルテンフリーでどうやってこんな風に作れるんですか?ってたまに聞かれることがあります。もしかしたら、ご自身で作ってみたいと思う方がいらっしゃるかもしれませんね」
「家族の為に」と始めたグルテンフリーのスイーツ作り。それが今となっては野田さんご夫妻の人生にとって、なくてはならないものとなった。おいしいチーズケーキをお客様に提供するだけでなく、芦屋町の活性化にも尽力するという生き方に共感する人も多いだろう。今までありそうでなかったyamagayaのグルテンフリーのチーズケーキは、今後も進化しながら人々を幸せにしていくに違いない。
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グルテンフリーのチーズケーキ屋「チーズケーキのyamagaya」
所在地:福岡県遠賀郡芦屋町船頭町3-17
営業時間:火水木10:00~17:00、金土~17:30(毎週水・木は岡垣町内浦にて出張販売)
Instagram:https://www.instagram.com/yamagaya2022/?hl=ja
この記事の執筆者

ninatte事務所
ninatte九州の運営事務局です。銭湯跡地、旧梅乃湯を拠点に活動中♨事務局ライター数名で日々記事を更新しています。