子育ての合間に見つけた、生きがい。香椎神宮のそばに灯る、ハンドメイド作家・児嶋さんの覚悟


― 11年の積み重ねが“形”になった、小さなアトリエで ―
まだ日差しがやわらかい昼下がり。
香椎神宮駅から住宅街を抜けて歩いていくと、ふと空気が静かになる場所がある。


大きな看板があるわけではないのに、扉の向こうから“誰かの好きが積み重なってきた気配”がそっと漂ってくる。
「ここが、一番落ち着くんです」

そう笑うのは、アクセサリーブランド sommet(ソメ) を手がける児嶋さん。
沖縄県出身、現在は福岡在住。二児の母でもある。
インターホンを鳴らすと、満面の笑みで迎えてくれた。
「こんにちは!」
肩ほどの長さの髪に、すらりとした佇まい。笑顔がよく似合う人だ。
初対面にもかかわらず、その親しみやすさに、私の緊張はすっとほどけていった。
中に入ると思わず「わあ…!」と声が漏れる。
アンティーク家具に囲まれた小さなアトリエに、やわらかな光が差し込んでいる。
目を引いたアンティークのシャンデリアは沖縄から取り寄せたものだという。
部屋に並ぶ家具も、ひとつひとつ自ら探し、選び抜いたお気に入りたち。
この空間には、児嶋さんの世界観が静かに広がっている。
窓際に整然と並ぶアクセサリーは、まるで呼吸をしているかのよう。
落ち着いた時間、古いもの、静かな空気感。
彼女の“美意識”が、空間の隅々にまで行き届いている。
けれど、この場所は突然手に入った“成功の証”ではない。
子育ての合間に、夜な夜な制作を続けた日々。
売れなかったマルシェ。
見向きもされなかった時間。
それでも手を止めなかった11年間。
そして2024年、ようやく形になったのが、このアトリエだ。
技術の価値
sommet(ソメ)が貫く、唯一無二の再構築

児嶋さんが sommet(ソメ) として活動を始めたのは2015年。
ボタンやヴィンテージアクセサリーをリデザインし、オンラインショップやPOP UP、そしてこのアトリエで販売している。


彼女の作品は、ひと目で“sommet”だとわかる。
「やはり私がデザインすると、大きくなってしまうんですよね」
大ぶりで存在感がありながら、アンティークの上品さをまとっている。
彼女の耳元にも、大ぶりのアクセサリーとイヤーカフが美しく飾られていた。
同系色でまとめた色合わせ。
2way仕様の多さ。
アシンメトリーなデザイン。
どれも一点ものとして、彼女の個性が確かに息づいている。

「一番楽しいのは、パーツを手に入れてからなんです」
その表情は、宝物を見つけた子どものようだった。

箱崎蚤の市で出会ったバイヤーとの縁から、海外の希少パーツを仕入れるようになったという。
“他では手に入らない素材”を前にすると、胸が高鳴る。
パーツを眺め、触れ、色を合わせ、組み合わせを考える時間。
それこそが、彼女の創作の核なのだろう。
ネイリスト時代に培った色彩感覚と繊細な作業技術。
LEDライトを用いた加工。
強度やバランスまで計算された設計。
華やかなアクセサリーの裏側には、積み重ねてきた確かな“技術”がある。


そしてその技術は、少しずつ確実に評価されてきた。
・2017年:雑誌『装苑』掲載、対面販売参加
・2019年:『FUDGE』『装苑』掲載
・2020年:『Beads Art』掲載、NY POP UP参加
・2023年:クラウドファンディング実施、フランス・パリ展示会
・2024年:アトリエOPEN
パリ展示を目指したクラウドファンディングでは、わずか2日で50万円が集まった。
それは彼女を応援してくれている sommet のお客さまたちからだった。
ひとりひとりに、心を込めてお礼のメッセージを送ったという。
それはきっと、彼女の世界観と技術を信じてきた人たちの“積み重ねの証”なのだろう。
マルシェでは、世界観が強すぎて立ち止まってもらえないこともあるという。
それでも彼女は迷わず言う。
「誰かに刺さればいい」
量産に寄せない。
流行に迎合しない。
自分の美学を守る。
それが、sommet の覚悟だ。
人となり
子育ての孤独から、前へ進む力へ
始まりは、子育て中にふと見たメルカリだった。
「これ、自分でも作れるのかな?」
その小さな好奇心が、人生を動かした。
ハンドメイドを始めてから、性格が前向きになったという。
外に出る機会が増え、人との交流も広がった。
好奇心旺盛で、挑戦することを恐れない。

日常の中で“心がふっとほどける瞬間”を大切にしている人だ。
活動を語るうえで欠かせないのが、家族の存在。
土日の出店時には夫が子どもを見てくれる。
「アトリエを作りたい」と話したときには、内装づくりにも携わってくれた。
棚も手作りで、力仕事はすべて担当。
応援は言葉だけでなく、行動で示してくれた。
一見順調に見える歩みも、決して順風満帆ではなかった。
売れない日。
評価されない時期。
不安になる夜。
それでもやめなかった理由は――
「好きだから」
たったそれだけ。
けれど、それがいちばん強い。
抱える懸念
個性の壁と、発信のエネルギー

個性が強いということは、簡単には理解されにくいということでもある。
マルシェで立ち止まってもらえない日。
SNS投稿への反応が乏しい時。
子育てと創作の両立。
「もっと広めたい。でも時間が足りない」
それでもSNS発信は欠かさない。
ストーリーズは毎日更新。
作品写真だけでなく、PR動画やライブ配信にも挑戦している。
顔出しは得意ではないが、自らアクセサリーを身につけ、その魅力を伝える。
Threadsにアトリエを投稿したその日、2人が来訪してくれたという。
画面の向こうの反応が、現実の一歩につながる瞬間だった。
発信を続けるには、エネルギーがいる。
ブランドを守りながら広げる難しさもある。
だからこそ、覚悟がいる。
読者へ
あなたの中の“火種”へ

「子育て中のママさんにも、この楽しさを知ってほしい」
取材を受けてくれた理由は、そこにあった。
自身が子育ての中で見つけた“生きがい”を、今度は誰かに手渡したい。
「年に2回開催しているワークショップを、今後はもっと増やしていきたいんです」
ネイリスト時代、後輩に感覚的な技術を伝えてきた経験がある。
教えることもまた、彼女の強みだ。
もしこの記事を読んで、
何か始めてみたいと思った人がいるなら。
誰かの挑戦を応援したいと思ったなら。
作品を見てほしい。
アトリエを訪れてほしい。
SNSをのぞいてほしい。
その小さな一歩が、きっと次の挑戦を生む。
夢 ― 世界へ、そして日常へ

アトリエからのさらなる展開。
ワークショップの拡大。
創る楽しさを、もっと多くの人へ。
子育ての合間に始まった小さな挑戦は、
今、世界へと手を伸ばしている。
好きなことを、好きだと言い続ける覚悟。
その灯は、読む人の中の小さな火種を、確かに揺らしている。
Instagram:https://www.instagram.com/sommet_1126?igsh=anZnbWljdGhram16
online shop:https://sommet.shop/




