コラージュで「変」を作り出す アーティスト『PonidaList』

『わからないところ』がコラージュの面白さ

大きなインパクトに目を奪われ、見れば見るほど目が離せなくなってしまう独特な世界観。『どうなっているんだ?』と細部まで見入ってしまうこの作品は、様々なパーツを組み合わせて作られたコラージュ作品だ。

今回お話を聞いたのは、コラージュという表現方法で創作活動をおこなうアーティスト、PonidaList(ポニダリスト)さん。

「なんちゃないコラージュなんですけど、ぱっと見ても何かわからないところに面白さがあるんじゃないかなと思っています。僕自身がコラージュにそういう見方をしていたので」

現在、ご本業もしつつイベントへの出展といったアート活動をおこなうポニダリストさんに、ご自身の作品作りに対する考え方や、仕事とのバランスの取り方など、お話を聞いていった。

『?』と思ってもらうために こだわるところ・こだわらないところ

"ご家族にも好評だったアナログ作品

ポニダリストさんが制作するコラージュ作品は、スマホ・iPadのアプリやPhotoshopで作るデジタルの作品と、手で素材を切り貼りして作るアナログの作品。そして自身のコラージュを元絵に、さらに紙を重ねて立体感を作るシャドーボックスの3種類がある。どの作品にもポニダリストさんの作風が現れているが、意外にも作品に意味を持たせるようなことは考えていないという。

「コラージュに意味はないです。その時の感覚で作っています。ただ変なものが好きなだけですよ。どうやったら変になるだろうって、そういうことを常に考えています」

意味を持たせることにこだわらない彼だが、コラージュ全体の見せ方のためにこだわっているポイントもある。

「僕はあまり顔(表情)と文字は使いたくなくて。顔があると作品がそっちに引っ張られちゃうし、文字はその作品を象徴してるようになってしまうので、そういう意図で見られたくないっていうのもあって。角度を変えて見ると『あ、これ女の人だ!』って気が付くような、常に『考えてね』って投げかけてるような作品が面白いんじゃないかなと思って作ってます」

モチーフの分かりやすい部分をあえて大胆に隠したり、異質なものと組み合わせたり。見る人の認識に少しのズレを生み出すようなポニダリストさんの作品には、コラージュだからこその面白さを活かすための、彼の見せ方の工夫が詰まっていた。

13年前のコラージュ作り、意外にも再熱

"学生時代に作ったビートルズのコラージュ

ポニダリストさんが現在のような創作活動をするようになったのは、コロナ禍で在宅の時間が増えたここ3年程だそう。しかし一番最初にコラージュをやってみたのは、13年前の大学生の頃だった。バンドをしていた当時、何かを“作ること”は好きだったが何を作ればいいのか分からずにいたという。

「バンドでは曲を作ることも好きでしたし、何かを作ることがしたかったんです。でも絵は苦手だったので、何か自分が作れるものを自分の得意にしたいなって考えて…その時にビートルズのポストカードでコラージュをしてみたのが一番最初です。切って作ることは好きって分かったんですけど、なんせ当時は大学生なのでコストが(笑)そこから特に進展することもなく、卒業して社会人になって。コロナ禍になるまでは何も作っていなかったですね」

学生時代に一度試していたコラージュを社会人になってから再開してみた彼。昔やって進展がなかったことでも、時間が経ち環境やタイミングが違えば、また違った広がりをみせることがあるのかもしれない。

作品も展示も、アナログだから生まれる面白さ

コラージュを再開させてからは、アナログ作品はもちろん、スマホアプリを使うデジタル作品をハイペースで制作しSNSで発信することが多かったポニダリストさん。しかし今年の2月におこなったグループ展をきっかけに“実際にお客さんに作品を見てもらうこと”について考えるようになったと話してくれた。

「作品を見てもらうっていうのが初めてだったので、お客さんがじーっと見てくれると『そんなに見ないで~雑なところがバレちゃう~』って思ったり(笑)でも、そこも含めて面白かったんです。アナログのコラージュって切って貼るだけじゃなくて、切り目を入れてそこに差し込むこともあって、表から見たら隠れてるけど裏面を見たらちゃんとあるみたいな。そういうカラクリや、切り方まで見て楽しんでもらえるのはアナログ作品ならではだなと。だから実際に見に来てもらえる時はアナログ作品だけを展示したいなと思ってます」

その場で作品を見てもらうことを経験したからこそ、SNSで作品を見てもらうこととの違いも明確になってきたという。

「SNSも見る人は見るけど見ない人は見ないので、限界があるというか。自分の作品も直に見てもらった方が面白いし、見てくれる人と直接話すほうがお互い知れることもありますしね。自分の足を動かさなきゃ人とのつながりは薄いままになっちゃうので、遠くで展示するときも、なるだけ在郎したいなと思うようになりました」

仕事とアート、続けていくために『程よい休憩』を

SNSだけでなく、実際に作品を見てもらう場所に出ることにも積極的なポニダリストさん。本業との両立は大変ではないかと尋ねると、作品作りが気分転換の一つになっているのかもしれないと話してくれた。

「コラージュに使う細かいモチーフを切り出していってると、他のことを何も考えずに黙々と集中できるので、これがストレス発散になってるのかも。音楽聞きながら3時間くらいやっちゃうこともありますね」

仕事が忙しいタイミングでも、自分が苦にならない創作活動のバランスを上手く取っていくことが大事だそうだ。

「作ろうとするとどうしても、本腰入れなきゃとか、納期とか、仕事との両立とか、色々出てくると思うんですけど“できなくなる”じゃなくて“どんな風に続けていけるか”を考えたときに、程よく休憩をするってことが大事なんじゃないかなと思います。忙しくて制作できないときも『今は休憩の時間だろうな』って考えてみるとか。自分の状態をみて作れるかどうか考えないと、作ること自体がストレスやプレッシャーになってしまったら良いものは作れないと思うから。無理せずバランスを取りながら、自分を管理していくっていうのも大事なのかなと思います」

自分自身のバランスを取りながら創作活動を続けるポニダリストさん。今もアートイベントやそこで出会った作品から刺激を受け、時にはその刺激を目標にして作品作りと向き合っている。そんな自身の創作に妥協しない彼の姿は、何かをやりたい、続けたいと思っている人に柔軟な可能性を与えてくれるものではないだろうか。

✻ポニダリストさんの活動状況やお問合せは、Instagram @ponidalist からご確認ください。

この記事の執筆者

金子華之

福岡市出身。層を一枚一枚たどるように、人や物の背景にあるストーリーを、聞いて、書くことが好き。2025年はストレートネックを治したい。

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コラージュアーティストPonidaList

福岡在住のデジタル&アナログコラージュアーティスト。

イベント一覧
Ponida List Solo Exhibition【Femme Fatale】

「運命の女性」をテーマにしたコラージュ作品を展示します。

First(10/04 – 11/30)
Second(12/01 – 01/31)
会場:bound(福岡市早良区西新5-6-2)
cafe 11:00 – 17:00
bar 17:00 – 23:00

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