過去を甦らせる写真修復士

白黒写真を色鮮やかなフルカラー写真へ

白黒の写真に色がつくと、過去の出来事がよりリアルに“そのとき確かにその場に存在したこと”だと思わせてくれる。

この、古い白黒写真を修復・カラー化するというサービス『monokara.』をおこなっているのは、『青藍デザイン事務所』の代表であり写真修復士・ソーシャルデザイナーの伊藤晃生さんだ。

高校時代は芸術について、大学時代はソーシャルデザインについて専門的に学んだ彼は、地域の方々が元気になれるように、地域の文化に興味をもってもらえるようにと考え、白黒写真のカラー化をはじめた。

ソーシャルデザインとは、街や地域の課題をデザインで解決するという分野だ。

その柔軟な考え方をもって自分自身もあらゆる活動を進めていこうとしている伊藤さんに、今回お話を聞いていく。

一色一色、とことん事実に基づいた色を

"左がAI、右が伊藤さんの手作業による色づけ

今はAIで白黒写真をカラー化することができるが、ひとつひとつ手作業で色をつける伊藤さんの仕上がりと見比べると、その差は歴然だ。不自然な色合いや色むらもなく、光のあたり方によって変わる色味まで忠実に再現されている。

人物の服の色や背景の建物の色も、事実をもとに一色一色塗っているそうだ。

「実は作業の7~8割くらいが時代考証なんです。着ている服の色もその人の性格が出るので。ご本人に話を聞いたり、分からないときは文献やネットで調べたりして、当時の色に一番近い色で塗っています。天気によっても色味が変わってくるので、気象庁のデータからその日の天気を調べて色づけしています」

撮影当時の状況をとことん調べる伊藤さん。彼の丁寧な作業があるからこそ、依頼者や地域住民の方々により喜ばれる一枚になっている。

「写真を見てくださった地域のおじいちゃんから『お兄ちゃん、タイムスリップしてきた?』と言われたときは嬉しかったですね」と笑顔で話してくれた。

ソーシャルデザインの視点からたどり着いた“写真修復”

元々父がカメラマンだった伊藤さんだが、写真やカメラにはあまり関心を持てず、幼い頃は写真を編集するフォトショップを触って遊んでいたという。

「昔は警察官になりたいと思っていて、警察のテレビドキュメンタリーがあるときは欠かさず見ていました。でも次第に“事件が起きない街を作ること”に興味が出てきたんです」

それがきっかけのひとつとなり、デザインとソーシャルデザインを学び始め、現在の写真修復士というスタイルにたどり着く。

「なので写真はまったくの専門外でして…」と苦笑気味に話してくれた伊藤さん。

しかしソーシャルデザインという分野を専門とする彼だからこそ、この写真修復法にたどり着き、地域の文化を広め、人々を元気づける写真に甦らせることができるのだろう。

『monokara.』では、白黒写真修復・カラー化の相談は無料となっている。自宅に古い写真がある人は伊藤さんのもとへ持って行ってみてはどうだろうか。色がつくことで写真の印象が大きく変わるかもしれない。

“本質を捉える”青藍デザイン事務所のこれから

"伊藤さんとお父様のツーショット、いただきました

伊藤さんが代表を務める『青藍デザイン事務所』には、モノクロ写真を修復・カラー化するサービス『monokara.』、カメラマンの父が運営する写真スタジオ『青い風船』。そしてこれから本格始動するオンラインデザインスクール『学デ子』の3つの事業がある。

「日本はグラフィックデザインやCGデザインといった専門的なデザインを学べる場所はあるんですけど、デザインの基礎を学べる場所がないんです。余白の使い方とか心理学を用いた色の知識とか…『学デ子』はそういうデザインの基礎を誰でも学べるオンラインスクールにしたいと思っています。デザインの基礎を知っているだけで日常の問題等、解決できることは意外と沢山あるんですよ」

さまざまな課題の本質を捉え、デザインの発想で解決する伊藤さんらしいデザインスクールになりそうだ。年間制ではなく、初期費用もかからないので気軽に参加しやすいのも嬉しいポイント。デザインに興味のある人は、ぜひ一度参加してみてはどうだろうか。

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2023年10月1日より、長崎エリアにて白黒古写真の高精度カラー化サービスを開始します!

長崎市浜松の老舗写真店『カメラの城島』と『monokara.』がタッグを組み、長崎エリアでもカラー化の受付が可能になりました。

受付は『カメラの城島』が、修復・カラー化は従来通り『monokara.』でおこないます。

2面額装と特殊印刷のメッセージカードが付いてくる、記念日の贈り物にぴったりのサービスです。

※料金など詳細は、白黒写真カラー化・写真修復専門店「monokara.」公式ホームページをご覧ください。

所在地:福岡県福岡市東区香椎駅前2丁目1番25号

ホームページ:https://seiran-design-office.com/

この記事の執筆者

福岡市出身。層を一枚一枚たどるように、人や物の背景にあるストーリーを、聞いて、書くことが好き。2025年はストレートネックを治したい。

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写真修復士伊藤晃生

福岡県福岡市東区香椎駅前
『青藍デザイン事務所』には、モノクロ写真を修復・カラー化するサービス『monokara.』、カメラマンの父が運営する写真スタジオ『青い風船』、そしてこれから本格始動するオンラインデザインスクール『学デ子』の3つの事業がある。

イベント一覧
「第1回 白黒写真カラー化・写真修復ワークショップ」開講!

ninatte九州で記事取材をさせていただいた、写真修復士・ソーシャルデザイナーの伊藤晃生さんによる「第1回 白黒写真カラー化・写真修復ワークショップ」が開講されました。 参加者さまは記事「過去を甦らせる写真修復士」&n […]

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